数学の勉強法について
わたしは現在数学科の 2 年生で、長期履修制度の対象者のため 1 年に一度教務幹事の先生との面談がある。今回の面談で、数学をどうやって勉強したらよいか、ということについて少しお話を聞けたのでメモしておく。
Q. 数学の勉強はどのくらいのレベルを目指してやればいいのか。なにをすれば、「ちゃんと理解した」ということになるのか。教科書の内容を完璧に再現できるようなレベルまで目指すべきか。
A. なにをもって「理解した」と言えるのか、その線を明確に引くのは難しい。しかしたとえば、数学科の専門科目の講義担当の先生方は、突然教科書やノートを取り上げられても、講義の内容をほとんど完璧に再現できるだろう。これは「理解した」と言っても良いレベルではないか。
ただ数学科のふつうの 2 年生が、全体の山の形が見えていない段階で、講義を受けながらそのレベルをいきなり目指すのは難しいだろう(不可能ではない)。 学生のうちはまずは解決したい問題を見つけてみると、勉強の道筋が見えやすい。数学の研究というのも、古い歴史を見ればなにか難しい問題があって、それを解決するために研究されてきたという側面がある。足元を固めるような勉強ばかりやって、ただの物知りなおじさんになってもしょうがない。
たとえば大学院への進学を目指しているなら、院試の問題を見てみるのが一つの方法。
たとえば(この具体例はうろ覚え)、 の積分のような問題は院試レベルでは必ず解けなければならない。 少し考えてみると、 は初等関数で簡単に表すことはできないことがわかるが、広義積分 は になることが知られている。この話は「そうなることを知っているから」できたという側面もあるが、おそらくこの部分の記憶だけを取り上げられても、重積分の知識があれば再現できるだろう。2 年生の重積分を最後まで勉強すれば、これがわかるようになる。
もっと簡単な 1 年生の範囲の例として、行列 に対して を求める問題を考えてみる。調べていくと、 が対角行列なら は簡単に求まることがわかる。もう少し調べると、「対角化」という操作を覚えればいろいろな行列についてこの問題が解けるようになることがわかる。そこで対角化について勉強する。対角化についてわかると、「線形代数 5 級」から「線形代数 4 級」のような感じになれる。こうやって、解きたい問題を見つけて、それについて勉強していくと目的がつかみやすい。
このようにして勉強を積み重ねていくと、ある程度まではわかるようになる。ただ、これは細い一本道をたくさん作っているだけなので抜けもれが出てくる。まずはそのような状態でも良い。完璧に理解することを目指してなにもできなくなるよりかは、抜け漏れがある状態でも勉強できたほうがよい。大学の授業では、ひとつの細い線ではなくて、ある程度足元を広く学べるように講義が展開されていくので、講義もうまく使って補っていくと良い。
院試以外にも、指定教科書の最後のほうを読んでみるとか、そういうのも目的を掴むためには有用である。